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ウルトラヒーロー大集合

3歳の息子が、今年に入ってから、ウルトラヒーローたちにはまっている。

この間、最終回を放映したテレビ番組「ウルトラマンコスモス」を見出したのがきっかけだ。テレビを見ながら「コスモース!」と叫び、ムサシ隊員(ウルトラマンコスモスに変身する主人公)になりきる。コスモスが怪獣にやられている時は、自分も「ううっ」と胸を押さえて床に倒れ込み、コスモスがカラータイマーをピコンピコン光らせながら最後の技を決める時には、すくっと立ち上がってポーズを決める。

私も、何度バルタン星人をやらされたことか…。

妻の話では、外出中、歩道の真ん中でもウルトラマンになりきって突然しゃがみ込み、「もっとパワーを!石の力をくれ!」などとやりだすそうだ(映画版ウルトラマンコスモスで、力をなくしたコスモスにムサシが不思議な石のパワーを送る場面があるのです)。

「恥ずかしいったらありゃしない」と言いながら、映画の場面をちゃんと真似て、歩道の真ん中で息子に石のパワーを送る妻もすごいのですが…。

ウルトラの力はたいしたもので、息子にとってはものすごい威力を持っている。 おもちゃ売場で、だだをこねて床に寝そべってしまう息子。外出中ふてくさると、その場にしゃがみこんでタバコを吸う息子(もちろんマネだけ)。その息子が、ウルトラヒーローの言うことなら、素直に聞くのだ。

ある日、子供向け雑誌の懸賞で、ウルトラマンフェスティバルのチケットが当たった。池袋のサンシャインシティで開催されるフェスティバルで、ウルトラ戦士たちの展示やショーが行われるとのこと。大喜びで、行くことになった。その前日の夜のこと。

夕食に、きらいなキノコが出たため、息子はいっこうに食べようとしない。なだめすかしたり、なんとか食べさせようとしたが、全くダメだった。2時間待ったが、口に入れる気配がない。

嫌いなものは無理に食べなくていい」なんて方針、我が家にはない。幼児教育にはいろんな考えがあって、「無理に食べさせようと子供に強要するのはいけません」なんてことも何かで読んだが、それを実行すると「嫌いなものは残しておけばそれでオッケー」ということになって、うちの場合「おなか痛い」とウソ泣きでごまかそうとしたりする。悪知恵は通用しないと、毅然とした態度を取らなくては、変なクセになってしまう(もちろん本当に体調が悪いときは別ですが)。

その日、2時間も息子の食事につきあわされた私は、少々イライラした。そして。

息子がとても楽しみにしていたウルトラマンフェスティバルのチケットを破るマネをして、「食べないなら、ウルトラマンに会いに行かないからな!」と隣の部屋に行き、チケットを捨てるふりをしたのである。

息子に見える場所で演技をすると、ばれてしまう。激怒したふりをして、わざわざ隣の部屋へ行き見えないとわかっている所で「こんなもの、破いてやる!」と、古新聞をビリビリ、わざとデカイ音を立てて破いた。

この音を聞いた息子は「本当にチケットを破かれてしまった!」と思い込んで、わんわん泣き出した。食事をしていた部屋に戻ると、息子が妻に抱き付いて泣きじゃくっている。顔を覗き込むと涙でグショグショ。ショックのあまり口もきけないようだった(妻の「ちょっとあんた、やりすぎなんじゃないの?」という視線が痛かった…)。

「キノコを食べないから、チケットは破いて捨てた。世の中には、ごはんを食べられない子がたくさんいるんだ。わがままは、許さないぞ。頑張ってキノコを食べれば、破いたチケットをセロテープで貼ってやる。そうすれば、ウルトラマンに会いに行けるはずだ。食べるか食べないか、はっきりしなさい。」と言ったところ、驚くほどあっという間に食べてしまった。

そんなにウルトラマンに会いたかったのか…ちょっと胸がチクンと痛んだが、ウルトラヒーロー効果のすごさを実感したわけだ。

息子がきちんと食事を終えた後、「破いたチケットをセロテープで貼ろう」と息子を隣の部屋に誘った。ゴミ箱を必死で探す息子。出てきたのは、古新聞の紙くずだけ。「あれ、ないなあ」チケットがゴミ箱にないのを息子に確認させてから、偶然を装って「あ、ウルトラマンのチケット、こんなところにあったぞ。パパ、さっきは、間違えて新聞紙を破って捨ててたんだな。いやー、部屋が暗くて気づかなかったよ」などと言ってチケット出し、息子に渡した(我ながら、ちょっと芝居がかっていましたが…妻の視線がまたまた痛かった…)。

「これからはキノコもしっかり食べます。」と息子は約束した。

そしてその翌日、もちろん、親子3人そろってウルトラマンフェスティバルへ行き、息子が大好きなウルトラマンコスモスやウルトラマンセブンなど、たくさんのウルトラヒーローたちに会ったのである。フェスティバル初日たったその日は、ムサシ隊員(役者の杉浦太陽さん)も舞台挨拶にやって来て、会場の子供たちに笑顔で手を振ってくれた。息子も大喜びだった(それ以上に妻が大はしゃぎで黄色い悲鳴を上げ、「ムサシーっっっ!」と叫びながら、夢中でカメラのシャッターを切っていた…)。

この時から、我が家では、ちょくちょく、ウルトラヒーローたちを利用させてもらっている。勝手に「すごいぞ。今日、仕事の帰りに、ウルトラマンと出会ったんだ。パパはウルトラマンと友達になったぞ」などと言い、ウルトラマンからのメッセージを息子に届けるのである。例えば。

私の携帯から、我が家のパソコンにメールを打つ。メールチェックの時、それをわざとらしく発見して「お、ウルトラマンからメールがきてるぞ!」なんて驚いてみせる。ある時は、コスモスから。またある時は、セブンから。ウルトラマンエイティやネオスも登場した。

”龍一君へ。パパとママの言うことをよくきいてね。キノコもしっかり食べるんだぞ“

”またいつか会える日を楽しみにしているぞ“

というような文章が、画面に並ぶ。

妻は「へえ、ウルトラマンたちって、携帯持ってるんだ~。絵文字まで使っちゃうわけね。ふーん」と、横目で私を見るのだが…息子は信じきっている。まだ字が読めないのに、パソコン画面をじっと見つめ、「また会えるといいねえ」と瞳を輝かせている。

テレビの「ウルトラマンコスモス」が終わった頃にやっと覚えた主題歌を、毎日くりかえし歌っている息子。ウルトラヒーローたちとのメールのやりとりは、まだまだ続きそうである。

引越しも無事終わり、新天地でさらに頑張ります。引越し後も、対応地区は変わりませんので、今後ともよろしくお願いいたします。

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