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子供をその気にさせる方法:其の2 カメラさんの場合

9月の某日、近所の子供専門写真館へ行きました。息子が今年5歳の七五三を迎えるので、少し早めに記念写真を撮ったのです。

袴姿でビシッとかっこよく決めるため、撮影3日前には美容院デビュー(いつもは私が風呂場で散髪しています)を果たした息子。生まれて初めての美容院では、シャンプー台の上で顔を引きつらせ、カットの間は口を開かず声も出さず、ずっと緊張状態…そんな話を妻から聞いていましたので、写真撮影の時にはどうなることやらと心配でした。

子供写真館に着くと、もう何組かの親子でいっぱいでした。子供を着替えさせるスタッフが、忙しそうにバタバタ走り回っています。11月の七五三シーズンは写真館も混みあうというので、9月の撮影予約にしたのですが、それでもこんなに混むものなのかと驚きました。

黒字にブルーグレーの模様が入った羽織と、グレーのタキシード、2着を選びました。11月の七五三参拝当日は、私が子供の頃のブレザーを「わざわざ買わなくてもこれでいいか」と着せる予定なので、写真では和装と洋装の両方、記念に残しておこうということになったのです。女の子は、七五三も2回あったり、成人式などでも振袖を着たりという機会が今後もあるでしょうが、男の子は5歳の七五三くらいのものですから(地域によっては男の子も3歳と5歳で2回お祝いするようですが)。

着付け室は男性立ち入り禁止のため(女の子が、よそのお父さんに着替えを見られたりするのを嫌がるそうです。スタッフも女性ばかりでした)、入り口のそばで息子の着付けを待っていたのですが…

「こらっ、立ちなさい!!」という妻のでかい声。

男性立ち入り禁止になってはいるものの、着付け室はドアなど仕切りのない出入り口のため、ほんの少し中が見えます。息子は出入り口の真ん前で着替えていましたから、チラッと目を動かしただけで、姿が見えました。パンツ一丁で、床にゴロンと寝転んで、手足をバタつかせています。

「やだやだ!そんなの着ない!!」

息子は着付けを拒否していました。妻がなんとか立たせようと手を引っ張っても、抱き上げようとしても、だめです。床にへばりついています。いったん息子を着付け室の外に連れ出し、私が話を聞くと「緊張するから着替えるのが嫌だ」ということでした。

大丈夫だからと、なんとかなだめ、着付けを再開してもらいました。よそのお子さんを見ると、女の子は嬉しそうに振袖を着ているように見えましたし、男の子も暴れることなくすまし顔でした。スタッフの方も、うちの息子に一番手を焼いていたようです。

息子の仕度も整い、なんとか撮影スクリーンの前に立たせることができました。すると今度は、カメラに向かってガンを飛ばしています。じとーっと険悪な視線に、妻も私も唖然としました。写真撮影に連れてきたのは間違いだったのか?と思いました。親にとっては楽しい記念写真でも、確かに、子供にとっては着慣れない物できゅうくつな思いをして、無理矢理ポーズを取らされて…「冗談じゃねえよ」という気持ちなのかもしれません。

が、さすがはプロのカメラさん。しかも、子供専用の写真館です。ドラえもんや、くまのプーさんなどのぬいぐるみを持ち出し、子供に話しかけます。ツンツンとぬいぐるみで何度も息子をくすぐり、思わずクスッと笑顔が出たところで、サッとシャッターを切ります。カメラさんがファインダーの前から姿を消す動作の、その素早いこと。

あれよあれよという間に、袴での撮影は終了。続いてタキシードです。タキシードへの着替えが、これまた大変でした。着付け室の外には、息子がわめく声しか聞こえてきません。妻が言うには「袴の時とは比べ物にならないくらい大変だった」そうです。袴姿の撮影で、息子はすっかり疲れてしまったのでしょう。

しかしスクリーンの前に立たせると、カメラさんはやはりぬいぐるみを使って、またも息子から笑顔を引き出していました。タキシードでの撮影は、あっという間に終了。息子の我慢が限界を超える前に、無事全てが終わりました。

店内のビデオ画面を見ながら、購入写真を選んだのですが、その画面を見て、妻も私も「えっうそっ!」と声を上げてしまいました。撮影中、全体的には終始ブスーッと仏頂面だった息子なのに、こっこり笑顔の写真が何枚もあるのです。すごい、すごすぎる…これがプロの「子供専門カメラさん」か…。

だだこねモード全開だった息子も、画面の中の自分の姿には「なかなかいーんじゃなーい」なんて、ちょっとテレながらもじいっと見入っています。

ちなみに、リクルート誌「稼げる資格2003年度下半期版」の取材を受けた時、私もプロのカメラさんに取っていただく機会がありましたが、パシャパシャッとフラッシュが光る中、「リラックスしてください」なんて言われても、なかなか笑顔なんて出ませんでした。妻に言わせると「ちょっと爽やか風を装ったわざとらしい笑顔って感じ」だそうです。(その写真は掲載雑誌参照) 絶対に装ってなどいませんでしたけれど!

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